以前にも書いたのですが、ちょっとまとめてみたくなったので少し書いてみます。
筋紡錘は筋についている図が有名ですよね。
こんな感じ。この図は標準理学療法学・作業療法学シリーズの生理学という本からです。本が古いので、今はもっと違った図が入っているかも知れません。だけどこんなイメージですよね。筋繊維が走行していて、それに平行にぽこんと筋紡錘がつながっているような感じ。 膜のことを調べていたら、ちょっと疑問に思ったんです。実際どこについているのかなぁって。
実際は筋周膜の中に存在してます。
右下の丸くなっているところが筋紡錘ですね。周りのブヨブヨした感じのところが筋周膜ということです。筋紡錘の両端は、筋繊維に接続しているのではなくて、筋周膜にくっついているのだろうと思います。
ということは、筋紡錘は筋繊維直接の長さを検知しているのではなくて、筋周膜の張りの状態から筋の長さを検知しているのだろうということになります。
ここで、筋の構造を改めて考えてみます。
筋繊維は筋内膜に包まれています。ある程度の筋繊維束を束ねるように筋周膜が包み込んでいます。この筋周膜の中に筋紡錘が存在しています。そして、いくつかの筋周膜を束ねて筋外膜(筋上膜)が包み込んで一つの筋肉の形を形成しています。筋内膜/筋周膜/筋外膜は折り返しながら厚みを変えて繋がっているシート状のものであると言われています。
左の2枚が、筋繊維とそれを包む筋内膜/筋周膜/筋外膜。そしてそれらの筋膜組織が腱と呼ばれる膜組織となって、骨膜に接続しているところの図です。で、白黒の蜂の巣のような図が、筋内膜から筋繊維を取り省いたところ。面白いですよね。これでは筋繊維が収縮しても筋内膜の中で縮むだけのような感じですが、インテグリンによって筋繊維と筋内膜が接続されていて、筋繊維の収縮は筋内膜に張力を発生させることになります。それらの膜張力が筋周膜や筋外膜に繋がっていて、最後の腱と言われる膜組織となって張力を骨に伝えることで関節が動くという訳ですね。
筋紡錘は図のような構造をしています。錘内筋が両端にあって、一定のテンションが筋紡錘に生じているときは錘内筋の収縮によって核袋線維の形が変化します。その構造変化をⅠa感覚繊維やⅡ感覚繊維が拾って興奮するといったことになるかと思います。
骨格筋の筋繊維が収縮すれば膜組織はたるむことになりますが、筋紡錘の錘内筋が働くと筋周膜の張りを作ると思うのです。それ以上に錘内筋が収縮すれば核袋線維が変形することになります。そこで初めて筋紡錘は筋(周膜)の長さをモニターすることになるのではないかと。この辺りのこと、もっと詳しい情報を持っておられる方がおられたら教えて欲しいです。
その筋紡錘を含む筋周膜と、それらと繋がっている筋内膜/筋外膜といった膜組織は筋腱移行部で筋繊維がなくなってきていて、腱組織に変化して行きます。その筋腱移行部に腱紡錘という感覚受容器が豊富にある訳です。
そこでは、膜組織の元である原繊維(コラーゲン繊維)がある程度内部に分布していて、網目状になっています。そこにⅠb感覚繊維が入り込んでいます。ここで、筋繊維の収縮が筋内膜/筋周膜/筋外膜の張力が腱組織を引っ張ってしまうと網目状の原繊維(コラーゲン繊維)が密になって隙間が減ります。その隙間に感覚繊維が入り込んでいるので、感覚繊維は挟まれるという構造変化によって興奮して感覚情報を作る訳です。
こうして腱紡錘は張力を感じることができています。
面白いと思うのは2点。
一つは、すべて同じ原繊維が密になってシート状になった膜と呼ばれる結合組織内で起きているということ。
このことから、この膜組織が適正な状態でないと、筋紡錘にしても腱紡錘にしても適正な感覚情報を受け取ることができないと考えられます。
もう一つは、筋周膜内にある筋紡錘の錘内筋も筋肉である以上、循環障害による影響を受けて筋自体が短縮する可能性があり、筋周膜内の環境が悪化すれば筋紡錘の錘内繊維が影響を受けて収縮能力が変化します。感覚神経もエネルギー交換や酸素交換がうまくいかなければ興奮性の変化が起きます。そして易興奮性か鈍麻といった感覚情報の異常をきたすのでは無いかと考えられることです。
このことは、筋感覚をきちんと入力するためには、少なくとも筋周膜までの細胞外成分が適正な状態で、間質液と組織の間で液交換などが行われている必要があるということになります。局所循環を適正にする必要があるということですね。
脳卒中であれ、整形疾患であれ同じです。
脳卒中であれば、姿勢を整え、姿勢を変化させたり、分離運動を促通しながらモールディングをしたりしっかり皮膚や筋に触れていくことは大切だと思います。整形疾患であれば関節の可動性を作りながらも、局所循環を改善させるために筋周膜が緩んでくるのを感じるぐらいまでマッサージして行くことなども大切なのではないかと思ったりしています。
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