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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

「頭が良い」とはどういうことか

更新日:4月25日


お茶の水大学で脳科学を研究されておられる毛内拡先生から本を頂きました。


「頭が良い」とはどういうことか−脳科学から考える


早速読んでみたら面白かったのです。

わかりやすい言葉で書かれているので、私たちが通常目にする論文などとは違って非常に読みやすいです。

ただ、一般向けかと問われると、少しだけ脳生理学や解剖学の用語が出現していますので、全く初めてこういった本を読まれる方には少しだけ敷居が高く感じるかもしれません。

ただ、そのほか神経科学の本に比べたら、かなり平易です。

PTやOTの方でしたらストレス無く読み進めることができそうに思います。そして、豊富な読書量に支えられた話題は非常に面白いものです。

(^_^)


目次を見てみると、


第一章 「頭が良い」ってどういうこと?

第二章 注意しなければ知覚できない

第三章 脳の働きが良いとはどういうことか

第四章 記憶という不思議な仕組み

第五章 思い通りに身体を動かす

第六章 感受性と創造性

第七章 人の気持ちがわかる

第八章 脳の持久力を担うアストロサイト

第九章 AI時代に求められる真の“頭の良さ”


といった構成になっています。

全体として、IQと言われるものが頭の良さを示す唯一のメジャーでは無く、それをどのように考えていくのか、「頭の良さ」というものと脳の情報処理との関わりはどのようになっているのかというような内容が順序よく解説されていきます。

後半では、「頭の良さ」の基準というものをある程度説明し、それの背景がシナプスの働きだけでは無く、それをコントロールしているアストロサイトの働きにもあることを説明されておられます。


読みやすいのですが、時折伏線があるような気がするのですね。

引っかかりというか・・・(^_^;)


私がもっとも引っかかったのは、言語と感情の話題なのです。

感情というのは、言語によって再現されるものであるので、動物に情動はあっても、それを感情とすべきでは無いといった話題があったのです。大筋は同意するのですが、では、失語症~特に内言語を失ったウエルニッケタイプの失語症の人には情動はあるけれど感情は無いと云うことになります。感情が人に特有なものであるとするのであれば、ウエルニッケタイプの人は動物に近い存在と云うことになってしまうのです。

そこで、私は、言語の特性を考え始めるのですが、言語の持つ論理性(もし~ならば・~のとき・~ではない・かつ・または)などは、視覚や聴覚、嗅覚などの知覚そのものにも存在しているのでは無いかと考えたりしていたのです。ほら、もし手に持っている物体を離したのならば、その物体は地面に向かった落ちていくとかは、言語にしなくても視覚的な予測として存在しているわけです。それが予測を裏切る、つまり手から離れた物体がふわふわと上に上がっていったのであれば、奇異な事象に注意が向き、危険性を感じたり恐怖を感じたりするわけです。

そういった論理性が知覚そのものに存在していて、それが知覚的な記憶から論理的に組み合わさっていくのであれば、それは言語に頼らない感情と云っても良さそうなものを生成するのでは無いかと思ったりしていたら・・・まぁ、読み進めれば結局・・まぁ、情動が意志決定をしていて、その決定された意志についてなぜそう言ったことを決定したのかと云うことを言語で理屈をつけたものを感情というのであれば、意志決定の本体は、その人の過去の経験から来る「知恵袋記憶」(毛内先生が考えられている記憶の形態の一つです)ですので、結局その人が人では無くなると云うこととは違うのだと云うことに気がついたり。

そのほかにもいろいろ伏線として、様々な用語であるとか現象であるとかが記載してあって、それらが読み進めていくウチに理解できはじめる様な、まるで推理小説を読んでいるかのような気にもなったりするのです。


本書の目的は、多分、アストロサイトがどのような働きを持ってシナプスに影響を与えているのかと云ったことをわかりやすく解説する事で、頭の良さというものを説明し、定義づけていくような目的なのかもしれません。

ただ、神経科学、脳のことなどを勉強する上で、まず、興味を持つ、面白がるというのはとっても大切です。

それは、記憶のメカニズムとして知られているヘブ則のように繰り返し学習が必要な側面と共に、塚田先生の時空間学習則で言われるように、情動の働きが短時間で学習を促進するという側面もあるからです。

面白くないことは勉強しても、なかなか理解が進まないし、覚えることも難しいのは皆さんご経験があるのでは無いかと思います。


まず、脳科学を面白がる。

そう言ったことができる本なのでは無いかと思います。

また、アストロサイトが脳の可塑性に強く関わっているのであれば、リハビリテーションも今までのような形態から変化が求められていくと、個人的には思っています。


あ、毛内先生、もし全然違うことを書いていたらごめんなさい。


これはあくまで私の読んだ印象ですので、皆さん、ご自身で読んでみてくださいね!

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