急性期病院に勤めていると、くも膜下出血は結構な頻度でリハビリテーションの紹介をされます。
結構沢山の症例を診させていただいた様に思います。
くも膜下出血は、発症後2〜3日から2〜3週間の間に脳血管攣縮が、わりと高頻度で起きてくる様に思います。
頭痛だけで収まれば良いのですが、血管攣縮による脳梗塞も起こすので、厄介な病態です。
経験的に、リハビリテーションの負荷を強くしたり、細やかな分離運動を促したら、その夜に脳血管攣縮による脳梗塞が起きる様な印象があって、私は脳血管攣縮がある時期は余り積極的なリハビリテーションアプローチを行わず、痛みの除去や脳循環を少しでも良くする様なポジショニング、リラックスできる様な軽い活動を中心に行って、安心できる様な声かけに気を配っていたのです。
今でもちょっと思い出すのは、後輩のPTと組む際には説明をして余り積極的なアプローチはしない様に話してからリハビリテーションを行っていたのですが、ある時、上司が一緒に組むことになったのですね。彼は経験年数もあるし、色々ご存じだろうと思ったのですね。そういった説明を行うのは失礼だろうし。そしたら、ある日、通りすがりに○○さんこんなことが出来るねぇと細かな分離運動を行った様子を話されました。
たまたまかも知れませんが、その夜に脳血管攣縮が強くなり、脳梗塞を発症されておられました。
たまたまかも知れませんよ。
たまたまなのでしょう。
私にそういった経験が何度もあったのもたまたまであったのかも知れませんしね。
そんなことも在り、脳外科医に何度か、なぜ脳血管攣縮が起きるのかをお聞きしたのではありますが、納得できる説明はありませんでした。その時は、やはり科学的に解明されていなかったのですね。
先日、漫画家の鳥山明さんがお亡くなりになりました。
病名は、硬膜出血だったそうです。ご冥福をお祈りします。
それで、ちょっとくも膜下出血のことを思い出したのですね。
で、最近は脳血管攣縮のことが解ってきているのだろうかと、ちょっと気になりまして。
少しだけ調べてみました。
以前よりはだいぶん解ってきているようですね。
平成28年に岡山大学からプレスリリースが出ていました。リンクを張っておきます。
これに寄れば、血管の平滑筋から放出されるHigh Mobility Group Box-1 (HMGB1)というたんぱく質が関わっているようです。
HMGB1の働きは現在も良くは解っていないようです。
2019年にこの様な報告があったのを見つけました。
その他、様々な情報がネット上にあるので、是非ご自分で調べてみた下さいね。
まぁ全体的にいえばHMGB1は主に核内に存在する非ヒストン性クロマチン結合タンパクだそうです。働きは免疫機構に関わっているらしく、細胞の損傷や炎症で細胞外に放出されているという事らしいです。
細胞外に放出されたHMGB1の働きとしては、炎症性サイトカインを誘導したりしているようです。
炎症ですから、局所の損傷を修復しようとする反応なのではありますが、それが返って脳血管攣縮を引き起こすという事になり脳梗塞になると。自分で自分の首を絞める様な反応になっちゃっている訳なのです。
お話を伺った時の脳外科医の印象では、血管が出血した血液でひたひたにつかるぐらいになっていると血管攣縮を起こしやすいと仰ってました。
もしかすると、細胞外に放出されているHMGB1が血液に混じって、他の血管をひたひたにしていると炎症が増強するかなにかしらの要因とともに血管の平滑筋の収縮を促してしまい易いのかも知れません。
現在は、抗HMGB1抗体と云った薬剤が既に臨床で使われているのかも知れませんね。
リハビリテーションにおいては、HMGB1が放出を強めない様にするにはどの様な刺激が必用であり、どの程度が適切なのかといったことが解ってくるとアプローチしやすくなりそうですね。現在のところ、そこまでの情報は無さそうではあります。
現状で言えるのは、交感神経系の働きを賦活して血圧の上昇が起きるのを防ぐ〜出血量の増加の予防と血管平滑筋の働きを強めないという様なことは大切と云っても良いのかも知れません。
あと、破壊された後の損傷された組織が上手くリンパ系に乗って排出され、必要以上に炎症が長引かない様に、特に頚部周辺の軟部組織を緩めて頭蓋内の間質液の排出に抵抗が起きない様にすることなども有用なのかも知れませんね。
後、わかりませんが、圧迫などによって循環が低下した脳神経細胞は、無理に活動させると酸素の欠乏によって細胞死に至る可能性があるかもしれません。軟膜の下でHMGB1が放出されたとして、それがくも膜下腔の血管に影響があるのかないのかわかりませんが、影響をあるとするのであれば考慮する必要も出てくるのかも…。
図は以下のサイトよりお借りしました。<m(__)m>
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