基本動作ってなに
- Nagashima Kazuhiro
- 4月2日
- 読了時間: 5分
基本動作って何?
あぁ、臨床経験30年以上の作業療法士の疑問としては、ちょっとインパクトのある疑問かも知れないですね。
学生時代は、何の疑問も持たなかったのですけれど。
(^_^;)
SNSで、PTの仕事は基本動作を回復させることにあるって情報発信を見かけまして、何時も疑問に思っていたことがふつふつと強烈に意識に上ってきたのです。
(*^_^*)
理学療法ジャーナル44巻1号によれば・・・
「基本動作とは,臥位から歩行に至るまでの一連の姿勢・動作の集合であり,座位・立位,および寝返り・起き上がり・立ち上がり・移乗,そして歩行と車いす動作の8種がある.」
まぁ、こんな感じですね。
実際この基本動作をどの様に評価するのかと言ったら、以前はバーサルインデックスとかFIMを参考に使うのが一般的なのかと思います。
と云うか、現在のリハビリテーションの実績を研究する際のメジャーな指標として、バーサルインデックスであるとかFIMが使用されているといった方が良いのかも知れませんね。
近年、BMSという評価(検査?)が出てきました。
寝返り、起き上がり、端座位保持、立ち上がり、立位保持、着座、乗り移り、足の踏み替えし、歩行について、これを基本動作とみなし(あくまで”みなし”だと思います)て、それぞれに上肢使用の如何によって点数をつけるという評価(検査?)法です。
例えば、起き上がり動作が出来たとして、起き上がる際に手でベッド柵を持って起き上がるのか、持たなくても起き上がれると点数が高くなり、柵を使わないと起き上がりが出来ない場合は点数が低くなるといった具合です。
何だか、FIMの動作項目を簡単にしたような感じを受けますね。
いずれにしても、だいたい理学療法ジャーナルに記載してある8種類です。
学生時代から臨床経験が少ない時は余り深く考えず、単純にそうだと思っていたのです。
(^_^;)
年を取ると、疑い深くなるんですね。
(^_^;)(^_^;)
そして、本当にこれだけに集約してしまって良いのかという疑問を持ってしまうのです。
脳卒中に限らず、障害というのは動作や行為の多様性が減少する状態を指すのだと思うのですね。
その多様性のある動作というのは、子供の頃からの運動経験・運動学習による結果だという事は言えると思います。
そうすると、理学療法ジャーナルに記載してある臥位から歩行に至るまでの一連の姿勢・動作の集合という基本動作というわれる動作群には、さらにその基礎となる、或いは相関関係上にある運動機能、動作群がある筈です。それらを、寝返り、起き上がり、端座位保持、立ち上がり、立位保持、着座、乗り移り、足の踏み替えし、歩行に集約してしまうと、他の動作がどうなっているのか解んないですよね。
発達発育学者の中村和彦さんが、幼児期に身につけたい36の基本動作という事を提唱されておられるようです。
文科省の製作した「運動遊びBook」にも採用されているようです。

まぁ、本来この36の基本動作も、もっと細かくなると思うのですね。
例えば回ると言っても、前転をするという動きから、側転や臥位で横にゴロゴロ回ったり、腹臥位でおなかを中心にグルグル回転する様な動作もあります。柔道の受け身のような斜めに回る前転のパターンもありますね。
他の動作も様々なパターンがあります。
この36の動作には入っていないようですが、床に座るという動作もありますよね。まぁ、この36の動作が出来るのであれば当然床に座ることは出来るのでしょうけれど、実際の生活では立っている状態から座位になる動作の間に、かがむとかしゃがむ様な動作が様々なパターンで存在しています。この36の基本動作の中では、㉙のつむとか言った動作に含まれるのでしょう。大人であっても、財布からお金が落ちたりしたら、かがんだりしゃがんだりして拾う必要がありますよね。床に水をこぼした時などは、タオルを持って、しゃがむか四つ這いに姿勢を変えて床を拭く行為(動作)を行ったりすることもあります。
そうやって色々考えてみると、基本動作って本当は、もっと幅が広い概念じゃ無いかと思うのです。
だとするとですね。
現存する評価項目では、本来の〜私が考えている〜基本動作群を表現しきれないのでは無いかなぁと思ったりするのです。
勿論、推論や評価をする手法として動作分析という方法もあるのですが、現在のリハビリテーションに関わる研究手法としては、動作分析での改善というのはなかなか見かけないのです。
いや、在るにはあると思うのですが、現在の科学的な研究に統計的手法が組み込まれているので、数値化しにくい動作分析といった手法は研究対象になりにくいといった側面は否めないのだろうと思うのです。
従って、現存のリハビリテーションにおける効果判定というのは、障害の一部しか表していない数値を使って、効果のあるなしを判定していると言う事になるのではないかと考えることが出来るのです。
あ、障害というのが動作や行為の多様性を制限するものだと仮定すればですよ。
まぁ個人的には間違っていないと認識しているのですけれど。
とすると、現在の研究に於いては基本動作の考え方自体が科学的手法を用いるために基本的動作という動作群が評価できない部分を、オッカムの刃で切り捨てられていると言えるので、あらゆるリハビリテーション手法の効果の是非については、「本来、存在する多様な基本動作を寝返り・起き上がり・立ち上がり・立位保持・着座・移乗・歩行に限定して研究した場合」という前提条件をつけた上でディスカッションしたり、リハビリテーションの効果について考えたりする必要があるのです。
どうでしょう?
「基本動作って何?」と思ってきたりしませんか?
以下の動作は座位から臥位へ〜臥位から座位への動作で、麻痺側上肢の使用を促したものです。
これも、病院でこの方をリハビリをされておられたスタッフが驚かれる動きなのです。
現在はもっとスムーズになってきておられますが、習慣化には至ってはいません。
今後の課題ですね。
しかし、この方に関しては、これが習慣化されると上肢はもっと使える手に変わる可能性もあると思うのです。
この麻痺側手の動きは、既存研究で使用されている評価表では点数化されない動きなのだろうと思います。
だけど、たぶん大切な動きなのだと思うのです。
繰り返しになりますが・・・
「基本動作って何?」と思ってきたりしませんか?
(^^)/
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