姿勢セットという言葉があります。
地球上の重力かで生きている人間(まぁ、ほかの動物もそうなのですけれど)のあらゆる動きは姿勢のコントロールと共にあります。
昔、人形遊びをした記憶のある方は多いのでは無いでしょうか?
人形の手を前に突き出したら、人形が前に倒れてしまい、バランスを取らせるためにいろいろしたりして。
”いろいろ”というのは、身体のパーツの位置の変化に対して私たちが姿勢を取りやすい形に変えていくのです。つまり、人形の姿勢コントロールを手伝っているんですね。
人は、そういった姿勢のコントロールを常にしているのでバランスがとれているし、次々と姿勢を変えながらなめらかに運動野行動をつなげていくことができているのです。
立ち上がる時に、足を少し引いたりして立ち上がりやすくするとか、手を”前習え”のような姿勢にするときにわずかに体幹を後方に引いたりして手の重さで倒れないようにしているとか。
無意識下のわずかな動きですね。
昔、姿勢のコントロールについては「姿勢セット(Postural Set)という言葉をよく使っていたのですが、最近では網様体脊髄路によるp-APAs、a-APAsの言葉を用いて説明することが多いのです。
今まで人の動きの中、現象的には起きている動きであっても、メカニズムがよくわからない姿勢セットを神経生理学的に解釈したり説明したりできる可能性があるわけですからね。
だけどですね。
考えてみると、先に書いた例のように、わずかであれ動きを伴う姿勢のコントロールは、少なくともp-APAsでは説明ができません。a-APAsも体幹の重心を後方に移動させたり、膝の屈曲を起こして立ちやすくするような動きまで説明できるものでは無いと思うのです。
じゃぁ、あの動きは何だと言うことになりますが・・・。
神経系の働き、筋出力パターンの組み合わせを利用していると考えることもできるかもしれません。
ご存じの通り、ひとつの神経細胞がひとつの筋につながっているというわけではありません。ひとつの神経細胞が複数の筋に接続されています。脊髄でも筋シナジーを作り出す回路網の存在が解っています。
それらの組み合わせや、あるいは高次運動野と基底核のループの中で適切な神経細胞の組み合わせによる出力を学習しているのかもしれません。
他に、Fasciaの接続によって起きる動きであるという考え方もできますのでアナトミートレインなどで説明が可能であるような気がします。
いずれにしても、上に記載した例で言えば、“前習え”の姿勢を取ろうとした際に神経出力の組み合わせが起きるとか、Fasciaの連結によって、三角筋の前部繊維から背部筋へのつながり(SBAL)などによって重心が後方に移動したとして、今度は後ろに倒れてしまわないように腹部前面筋が働かないといけないわけですが、この時にp-APAsが効いていて、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋などが伸張されたときにγ系が働いて速やかに安定性を構築し直さないといけないわけですから、網様体脊髄路が働き続けていると言うことが必要ですし、姿勢のコントロールにおいて網様体脊髄路が非常に重要な要素のひとつであることは間違いないことです。
だけど、やはり網様体脊髄路からだけでは説明ができないのも間違いありません。
私の結論です。
臨床的に動きを見るとき網様体脊髄路の作り出す先行随伴性姿勢調節(APA)のメカニズムは大切ではありますが、それだけではやはり十分とは言えません。
ですので、臨床的な分析に当たって、姿勢セット(Postural Set)として分析しつつ、その要素として網様体脊髄路の働きを見ていくのが良さそうだと思うのです。
言葉としては、「姿勢セット」でいいのではないかというお話でした。
(๑>◡<๑)
Comments