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執筆者の写真Nagashima Kazuhiro

姿勢疲労症候群

「姿勢疲労性症候群」という名前を見たのはずいぶん前です。

調べてみたら「Cailliet R:肩の痛み(第3版). 荻島秀男(訳)、医歯薬出版、pp275-285、2004.」に記載されています。


腰痛の原因は現在に置いても、まだ不明なものが多いとされているようですね。

厚生労働省のサイトには以下のような文章を見ることができます。



医師の診察というのは、レントゲンとかCTとかMRIとかも指すのでしょうね。

画像所見で出ない、また、痛みの部位が特定しにくく、その痛みも、診察時は余り目立たないけど、訴えがあるような場合。つまり、以前であれば不定愁訴と言われるような訴えの場合は、おそらく非特異的腰痛に分類されてしまうのでは無いかと思うのです。

で、痛くて活動性が下がってしまうような患者に対して「怠けている」といった印象を持ってしまったり。

(^_^;)

それって、知識が臨床に追いついていないという事なのかも知れないと思ったりするのですね。


Fasciaの構造と働きを考えると、骨や脊髄などに問題が見られなくても、痛みが起こるメカニズムは想定できます。

Fasciaの動きは、血液やリンパ、組織液の動きなどの循環に関わっています。組織液の動きは細胞のエネルギーや酸素交換を行っていますので、細胞にとっての呼吸を支えているといっても良いだろうと思うのです。


人の生きた筋膜の構造というDVD付きの本がありまして、その動画を見ると良くわかるのですが、youtubeにその本のサンプル動画がありますので、この本をご存じない方はそこで動画を見ても面白いと思います。

URLを張っておきますね。


2:40あたりで、Fasciaの動きで、血管内の血球成分が動いているのが解ります。

先ほど書きましたが、実際日本に着いているDVDはもっと画質が良いのでもっと解りやすいのですけれど。


局所循環障害が起きると、細胞外成分、組織液が酸性に傾いたり、発痛物質が代謝されにくくなったりしてポリモーダル受容器の閾値が下がり、痛みを感じやすい環境になることが推測できますよね。



こうやって考えて行くと、レントゲンや、CT/MRIなどの画像所見では発見できないであろう痛みが存在するのも理解できますよね。

また、ストレスなどの心因性と云われる因子によっても痛みが出やすいと言われています。

私は受動意識仮説を支持していますので、心という存在が痛みの因子になるという考え方には否定的なのです。

おそらくストレス環境下で引き起こされる無意識下の姿勢や行動選択の結果起きる、姿勢固定や局所の筋緊張の増加が上記のようなメカニズムを引き起こすのであろうと思うのです。

ほら、上司に怒られたりすると姿勢を固定して動かなくなりますよね。


ああ、見ているだけで辛い気がします。(^_^;)

この姿勢で長時間怒られていたら、腰や首が痛くなりそうですよね。(*^_^*)



これって、もしかして、高解像度のエコーで軟部組織の動きを確認したら、もっと原因が特定できるのでは無いかと思ったりもするのですけれど。

たぶん、整形内科の医師などではこういった検査が行われているのでは無いかと思いますけれど。


さて、こういった姿勢疲労症候群、或いは姿勢疲労性疼痛といわれるものは、その原因があるような場合、活動すればするほど痛みを経験することになります。


例えば、足関節に背屈制限があるような場合、立位や歩行場面で常に同じような姿勢を取ってしまうことになるわけです。


すると活動の度に痛みが出現するわけですから、これは意識下であろうと無意識下であろうと記憶に残ってしまいますよね。


活動をするにしてもしないにしても、それは行動の選択と言えます。

活動をするという事を選択するのか、活動をしないという事を選択する事になります。

活動を選択するのは腹側線条体の働きが関わってくることになりますよね。


腹側線条体とは、側座核を中心とした回路です。

側座核は、「やる気や動機付け」と云ったものを司るとされています。やる気とか動機付けといったものを脳科学的に解釈すると、情動的な行動選択に対する報酬回路としての役割といった感じになろうかと思います。

新皮質が線条体に投射して、ループ構造を作っていることが知られています。これは主に視床のVA/VL核を介して運動野や前運動野に投射している回路ですね。基底核ループといったりします。

これが拡張されて、より広い皮質領域から線条体−淡蒼球への投射があることが解り、より背側の淡蒼球系は視床のVA/VL核へ投射されますが、腹側淡蒼球はMD核へ投射され、MD核からは、前頭前野、前辺縁系、前部帯状皮質、霊長類に於いては帯状回運動野を含む前部帯状回への投射があります。帯状回運動野は延髄網様体脊髄路への投射も持ちます。


視床の図ですね。


さて、この側座核の入力を見てみます。

側座核はコアとシェルというふたつの異なる構造から構成されます。



やはり、海馬〜記憶情報からの入力を受けていますね。

ある行動をした際に上手くいったとか、上手くいかなかった記憶。或いは、快適であったとか不快であったと言った記憶は、無意識下に側座核の情報に影響を与えていると言うことになるのでは無いかと思うのです。それは、腹側線条体のループによって、取るべき行動を選択するわけです。

どの行動が最も報酬物質が多くなると予測されるのかといったことが行動選択に関わっているのですが、この側座核がそういった行動選択に大きく関わっていると行って良いのでは無いかと思います。


話を痛みの記憶に戻します。

痛みの記憶は、こういったメカニズムを介して、無意識下に行動選択に関わっている可能性が在るのではないかと私は考えているのです。

この回路の働きによって、痛みの記憶は、行動を起こさないという行動選択をしているのでは無いかと思うのですね。言い換えると、休息をするという行動選択を無意識下に行っているという事です。

活動をおこすより、休息をする方が報酬物質が多くなると予測されるような情報処理という事ですね。


さて、こう考えると、「怠けている」という表現は適切ではないですよね。

動くと痛くなったり疲れたりしやすいから、無意識下に休息を選択しているのです。

ですので、口頭で、頑張れとか、やらないと悪くなるよといった事を言っても無駄ですよね。

まずは、動いても快適であるとか、快適で動きたくなるような姿勢制御や運動制御が出来るようになっていただく事が優先事項になるはずなのです。


この場合だと、姿勢疲労症候群を避けるために、足部の問題を解決するとか、動く際に足部を確り使えるように中枢神経系に働きかけて姿勢を変化させるとか云った事になりますでしょうか。


それが、たぶん、リハビリテーションに求められていることでは無いかと思ったりするのです。










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