椅子から立ち上がる際「頭部を膝の前まで出すと、重心が足にかかって立ち上がりにつながる。」という指導方法があります。患者さんに立ち方をお伝えする際や、他職種に立ち上がり字の操作をお伝えするときに時折耳にする指導ですね。最近はどうなのか解りませんけれど。
確かに、立ち上がりのバリエーションのひとつではありますね。
ただ、私の感覚では、頭部を膝より前方に持っていくようにして立ち上がるのは、なんらかの理由〜疲れているとか、痛いところがある、気が向かない仕事のためなどの理由で立ちたくはないけれど立たなければならない時の立ち上がり方のような気がするのです。
ご利用者さんが、一生懸命体を屈曲させて足に体重をかけようと努力されておられ、微妙なタイミングで下肢を伸展されるのですが、お尻がちょっと浮いて後ろに移動してしまうような感じで上手く立ち上がることがとっても難しい様子でした。
写真左のような立ち上がりを目指しておられたのだと思います。
本来、立ち上がる時には、なにかしら興味があることや、驚いたり、なにかに近寄るためとかそう言った場合の方が多いと思うのです。
本来の立ち上がりの最も多いパターンは、脊柱の抗重力伸展活動と視覚情報を集めるために頭部の自由度を保証するヘッドコントロールが共存した形で起きてくるはずなのです。
そもそも立ち上がり動作は、動物としての人間が環境の中で生存するための手段のひとつです。自由な視野を確保して外的環境情報を集めつつ立ち上がらないと、生存(環境適応)のために不利ですよね。
そう言った立ち上がりは、たぶんですが、座っている姿勢から体幹は抗重力的な伸展、骨盤を少し前傾させて僅かに臀部の重さを軽くして下肢に荷重をかけつつ、接地している足底の摩擦とハムストリングスなどを使い、荷重が少し抜けたお尻を僅かに前にずらして、いったん膝は屈曲を少し強めつつ膝が前下方へ落ちるように移動して完全に足底へ荷重をかけながら立ち上がりにつなげるような動きをするのでは無いかと思うのです。
右の写真みたいな感じですね。
この方法だと体幹の過度な屈曲や、頭部の屈曲などで無理に重心を前方に動かさなくても立ち上がりにつながります。
まぁ、これだけでは無いだろうと思いますけれど。
立ち上がりは、立ち上がる本人の状況と環境の中で無数のバリエーションがあるはずです。だから、なにかしらの方法論だけで考えるのでは無くて、目の前の人が今ある身体内環境・外環境のなかでなぜそう言った立ち上がり方を選択されているのかとか、他のバリエーションが可能かどうかとか、可能であれば、どういった介入が必要かとかを考えることがとっても重要なのでは無いかと思っています。
先ほど書いたご利用者さんに、膝を前に落とす方法を操作したら、軽く立てるようになられて、びっくりしておられました。
Comentarios