前回に引き続き、日本腎臓リハビリテーション学会誌に載っている論文の紹介です。
今回は、特集 透析患者の足病変と腎臓リハビリテーションの”運動療法の実際"を読んでみて、考える事を書いていきたいと思います。
まず、この論文では切断のリスクがある足病を包括的に捉える概念として提唱されている、包括的高度慢性下肢虚血疾患(CLTI)を中心に話が進んでいます。
慢性腎臓病(CKD) 患者の足病は、末梢動脈疾患(PAD)や、糖尿病、高齢者の足病変が混在していて、下肢動脈虚血だけではなく、損傷部位があれば創の大きさや深さ、深さ、部位感染合併の有無など多様な状況があって、切断リスクのある足病を包括的に捉える概念としてCLTIが提唱されていると紹介されています。
この時点で、CLTIと云う状況があるという事は下肢の問題のみでは無くて、慢性腎臓病を
引き起こす糖尿病やその他の全身疾患が在るという事になりますね。
CLTIの予後として、大切断後の透析患者の生存率は1年後56%、5年後15%と不良だそうです。
やはり、この状況はCLTIの悪化によって大切断になったと云うより、全身疾患の悪化によりCLTIが悪化したため大切断に至ったのではないかと私などは読み取ってしまったりします。
その後、歩行について以下のように記載してあります。
「術後60日以上生存者のうち歩行可能になるものは12%と極めて少ない」
なぜかなぁと考えてみると、大切断以外に全身状態の悪化によって体幹を含む運動機能になにかしらの問題を呈していた可能性を感じたりするのですね。
以下の文章が記載してあります。
「CKDの中でも透析患者は、様々な理由で入院期間が長期になることで廃用症候群を呈しやすくなり、予後も不良である」
一見まっとうな意見に見えますが、先に書いたとおり、全身状態の問題によって入院期間が長期になったり、術後の創部の回復が遅れるのだろうと思うのです。
因果関係のように記載されておられますが、入院期間が長期になることと、廃用症候群を呈することは相関関係では無いかと思うのですね。背景には全身状態の問題があって、そこに因果関係が成立していると考える方が自然だろうと思うのですね。
リハビリテーションについては、「リハビリテーションスタッフが、専門医との連携の下、術後早期よりリハビリテーションを行う事で有害事象無く歩行能力およびADLの改善が得られると報告されている」との報告の紹介の後にリハビリテーションのお話しに入っておられます。
当たり前のようですが、こういった患者さん達の姿勢−運動障害というのはある程度ステレオタイプな生活習慣が長期化することで様々な問題につながっていくことが多いという印象を持っていますので、ちょっとした違和感を感じたので、この報告の元の論文をあたってみます。
日血管外会誌 2011「重症虚血視床例に対する血管リハビリテーション」という論文だそうです。
題名のところにリンクを張ってます。
これをざっと読むと観察期間は術後3ヶ月から18ヶ月ですね。
と云うことは、正確には「18ヶ月間の観察に於いて有害事象無く歩行能力およびADL能力の改善が得られた」という事ですね。これなら違和感なく理解できます。
私、透析中の患者さんのリハビリテーションに関わらせていただいてまだ2年ぐらいの経験なのですが、お話をお聞きすると腰が痛くなって歩けない時期があったりとか結構様々なのです。それでその対応を透析中という制約の中で思いつくかぎりおこなってはいるのですね。
と、ここまで考えると、果たして有害事象とはどの程度のことなのかというのも気になりますね。腰痛などは有害事象に含まれているのでしょうか?その程度のことは含まれていないのでしょうか?わかんないですね。
なにかしら、転倒頻度が増えるとか、傷が出来てしまって、再度切断などが必要となるようなことが有害事象なのでしょうか?
私としては、日常生活やFAI項目などが「しにくくなる」とか、「したくなくなる」というのは有害事象だと捉えるのですけれど。研究で表現したいことが何かと云う事によって、そういった基準は変わってくるのでしょうね。
ともかく。この研究を発表されておられるセラピストの先生も、おそらくトレッドミルなどを利用する方に対しても、PTとしてアプローチすべきところにはアプローチをされているのだろうと思うのですが、そういった事を論文に入れると結構論点が不明確になっちゃうので書かれなかったのかと思います。
そんなセラピストはおられないとは思いますが、この論文を読んで、論文を単純化して理解し、術後早期から監視下でトレッドミルが出来る人は監視下でトレッドミルといったアプローチを行われると、もしかしたら有害事象を起こしちゃうかも知れないですね。
いや、ホントにそんなセラピストはおられないとは思いますけれど。(^^)
細かいことはさておき、リハビリテーション介入が合った方が予後が良いというのは、そう思うのです。
リハビリテーションの実際として、創傷予防の運動療法と創傷治療中の運動療法について書かれておられます。
なるほどなるほど。
創傷予防という観点では、CLTIを中心にお話しを勧めておられますので、下肢が中心となった説明をされておられます。
参考になります。(*^_^*)
確かに、透析をされておられる方を見てみると下肢の浮腫は結構持続したものがある様ですので、それによる軟部組織の変性、また、軟部組織の変性に基づいたと思われる足関節を中心に足趾を含んで足部全体の可動域制限が起きやすいです。するとちょっとした登りのスロープなどで転倒される方もおられますし、そのような点から云えば屋外歩行が可能となる足部〜下肢の状態を維持して頂くのは大切ですね。
私の印象ですけれど、CLTIの他の要素〜下肢以外に目を向けると、3回/週に、日中に4時間前後仰臥位でいるという特殊な生活習慣となるため、背部の筋群が萎縮傾向にある人達も多く見られるように思いますので、多裂筋の働きも弱く抗重力性を失いやすい様です。これにより円背の傾向をもたれてしまう方も多いようですね。すると脊柱の動きも不十分となりやすく、その影響か方の可動制限のある人も多い印象です。足部のみではなくて体幹機能についても詳細に見ていく必要がありそうだと感じています。
そういった意味では、この論文で紹介されている透析中の運動療法として「歩行につながる筋力として、下腿三頭筋や大体四頭筋、中臀筋や大臀筋などの筋力強化を目的としていく」だけではなくて、脊柱の動きに注目した床上での様々な動きを導入していくことも大切なのでは無いかと思います。
CLTI創傷治療中の運動療法の記載は、細かなところで疑問はありますが、その部分については私は未経験ですので非常に参考になりました。
フットケアと透析中の運動療法、CLTI創傷治療中の運動療法の大切さが理解できました。
ありがとうございます。
同時に、創傷予防の運動療法については、今回はCLTIを中心にお話しをされておられますので記載が無かったのだろうと思うのですが、もっと様々な姿勢と運動を経験していく必要があるだろうと思いますし、実際には様々な事に取り組まれておられることと思うのです。
そういった事も機会があれば教えて頂きたいなぁと思います。
また、何かの機会にどこかでそんな研究に出会えることを期待しています。
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