脳損傷による高次脳機能障害は失認や失行の名前で知られていると思います。
しかし、この分類は認知システムが人の行動や行為を制御しているという逐次プロセスの考え方が根底にあっての分類方法です。
山鳥先生は、割と早くから「失行」と「失認」という分類では無くて「失認−失行」といったような病態像である事を指摘されておられたと記憶しています。
近年において、脳の機能局在と併せてその連合繊維である上縦束/弓状束、帯状束、下前頭後頭束、鈎状束などと、左右を結ぶ交連線維にによって連結され、多くの繊維は双方向性に情報をやりとりしていることが解ってきています。
そのことから考えても、認知システムが運動システムを駆動していると同時に運動システムは認知システムを変容させる構築学的な特徴を脳が持っているといえるのだと思います。
ほら、外的環境の多くの環境認知システムは身体認知システムを中心に駆動されるのですが、身体認知システムはどう考えても運動制御システムと並列処理されていますから、その点から考えても認知システムと運動制御システムの情報は並列処理されていると考えるのが妥当でしょう。
さらに、前頭葉腹側運動前野前方のF5領域をはじめ、頭頂間溝野のAIPや縁上回/角回などの下頭頂小葉あたりにミラーニューロンと呼ばれる細胞群が存在していると言われています。ミラーニューロンは他人がある行為をするのを見た際に発火することが発見されたニューロンです。F5領域におけるこのミラーニューロンに至っては感覚ニューロンであると同時に運動ニューロンであるという特性を持っていることになります。
こういったことは、感覚−知覚−認知−運動を分けて考えることの無意味さを示していると思うのです。
あらゆる感覚情報は運動情報に変換され、それによって引き起こる姿勢や運動の変化は感覚情報に変換されます。
失行と失認、高次脳機能障害とは何かという事を考える際、逐次プロセスによる分析は大きな障壁となることと推測できます。
今、私が思う高次脳機能障害の像とは、
「脳の連合野およびその連合繊維の損傷によって引き起こされる、行為/行動/運動の選択や順序の誤りによる適応行動障害で、それは多くの場合、感覚情報を運動情報へ変換する際の問題を抱えており、そのため、運動機能障害および姿勢調節障害を伴っている。」
といった感じでしょうか。
第2回目のZOOM研修会。内容はこれにしようかと思っています。
理由は、病院という医療機関と手を切ったのでおそらく今後強い高次脳機能障害を担当させていただくことは無いと思います。なので今以上に臨床観察/アプローチを進め考察を進めることが出来なくなること。
ZOOMでの研修なので、実技的なことより論理的な部分の方が話しやすいことから今しか出来ない研修会であるかもしれないこと。
の2点。
ですので、おそらく高次脳機能障害について話をするのはこれが最初で最後と思います。
日時はまだ未定ですが近日中に・・・
(画像はBrain and Nerve 第68巻 第11号 連合野ハンドブック P1285より)
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